家族信託について ~その4~
2022.04.03 Sun
今回からは、家族信託の活用事例をご紹介していきます。
①認知症の配偶者に自分の財産を渡したい(長男からの相談事例)
母は、認知症で施設に入所しています。父親は実家で一人で生活しています。
母の施設利用料などはすべて父が支払い管理しています。
ただ、父も高齢で今後の事を考えるとどうすれば良いか心配とのこと。
この様なケースの場合、今後心配されるリスクは次のとおりです。
1.父が認知症になってしまた場合、おそらく父も施設に入所すると思います。そうすると父の財産の処分が出来なくなります。例えば自宅やアパートの管理や売却などが出来なくなってしまいます。
2.もし父が他界した場合、父の財産の遺産の手続きをする際、母は認知症のため遺産分割が出来ません。遺産分割するためには母に成年後見制度を利用する必要が出てきます。前回もお話ししましたが、成年後見制度を利用すると毎月の後見人に支払う費用がかかることと、柔軟な財産管理が出来なくなってしまいます。
ここで次の様な家族信託契約を締結します。
委託者 父
受託者 長男
受益者 父
第二受益者 母
信託財産 実家、金銭、アパートなど
信託の終了 父母の死亡
信託終了後の財産 長男に帰属させる
この内容で家族信託契約をしておくと、父の判断能力が低下してきても施設の利用料の支払いなど問題無くすることが出来ます。また、父が施設に入所した後の実家・アパートの修繕や売却なども事前に決めていた内容で長男が単独で処分することが出来ます。
そして、父が他界後は、第二受益者を母とする事で、成年後見制度を活用せずとも父の財産を母に承継させて、長男が受託者として母が亡くなるまで管理することが出来ます。
最後に、母が他界後は財産を長男が承継して信託契約は終了となります。
このように、あらかじめ将来のリスクを想定し、信託契約を締結することでスムースな財産の運用と承継をさせることが家族信託では可能です。
次回は、別の事例をご紹介いたします。