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家族信託について ~その5~(共有対策)

2022.04.06 Wed

 

今回は不動産の共有問題について家族信託を利用できるケースについて説明いたします。

 相続を契機に先祖代々の不動産が共有名義となってしまったケースは多々あります。相続の際、その当時は色々な事情があって共有名義としたのですが、今後の事を考えると共有者が多義に渡り権利関係が複雑になることを回避したいため、共有名義を解消し一本化したいと考えている場合。

 

 事例

 先祖代々の不動産(駐車場として貸している土地)を現在は長男、次男、長女の3人で共有しています。

 長男には子供が1人、次男には子供が4人いますが、長女には子供がいません。

 今後、兄弟姉妹のうち誰かが他界したり認知症になった場合にどうなるか心配とのこと。

 

 この様なケースの場合、今後心配されるリスクは次のとおりです。

1.このままの状態では将来共有者が多数になり不動産の管理に支障が出る可能性があります。例え   ば、子供のいない長女が他界した場合、その相続人は長女の夫と長女の兄弟(長男・次男)です。遺産分割が未了のまま、長女の夫が他界すると、今度は長女の夫の兄弟姉妹が相続人となってしまい、疎遠な人が共有者となる可能性が出てきて不動産の管理に支障が出るかもしれません。

2.長男、次男、長女も高齢になっているため今後、一人でも認知症になると不動産の管理にも不安がつきまといます。

3.次男には、子供が4人いるため、もし次男が高いし相続が開始した際、遺産分割がまとまらずに不動産の管理が困難になる可能性があります。

 

このようなケースでは、現在の共有者である3人の持ち分につき、次のような家族信託契約を締結します。

 

長男の信託契約の図

  

信託契約(長男)

委託者       長男

受託者       長男の子

受益者       長男

信託財産      先祖代々の不動産、金銭

信託の終了     長男の死亡

 

長女の信託契約の図

信託契約(長女)

委託者       長女

受託者       長男の子

受益者       長女

信託財産      先祖代々の不動産、金銭

信託の終了     長女の死亡

信託終了後の財産  長男の子に帰属させる

 

次男の信託契約の図

信託契約(次男)

委託者       次男

受託者       長男の子

受益者       次男

信託財産      先祖代々の不動産、金銭

信託の終了     次男の死亡

信託終了後の財産  長男の子に帰属させる

 

 

この様な内容で信託契約を締結しておくと、今後は受託者である長男の子が先祖代々の土地(今回は駐車場)を管理していくことが出来ます。受託者は長男の子ですが、受益者は、長男、次男、長女なので、駐車場の賃料は長男の子ではなく今まで通り長男、次男、長女各々が受け取ることが出来ます。

 もちろん、共有関係の解消には、信託を利用せずとも売買・交換・生前贈与・遺言などの方法でも解消する事は出来ます。

 ただ、売買や交換は対価が必要となります。また、税金の負担(不動産取得税、譲渡所得など)も考慮する必要があります。生前贈与は贈与税の問題がありますし、遺言は途中で気が変わって書き換えるなどのリスクがあります。

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