家族信託について ~その8~ | 司法書士法人アンドリーガル(上田事務所)

上田事務所のお電話でお問合せはこちら

司法書士法人とまこまい法務事務所(上田事務所)の営業時間

司法書士法人とまこまい法務事務所(上田事務所)のメールでお問合せはこちら


家族信託について ~その8~

2022.04.20 Wed

障害のある兄弟姉妹がいる場合の財産管理について

事例

父が他界後、高齢の母と障害のある長男は同居して生活しています。長男の生活は、高齢の母が金銭も含めて全て面倒を見ています。長男は障害を持っているため結婚していなく子もいません。現状は何も問題無いのですが、母も高齢のため今後の事を考えると、認知症にもし万が一なってしまったら、もしくは、他界してしまった時、長男の生活が心配です。

母は、長男の生活も心配していますが、最終的には長男と私(長女)に財産は平等に渡したいと考えているようです。何か良い方法はないでしょうか?

 

◇このような事例で何も対策をしなかった場合

 

 母の年齢を考えると、今後認知症になり判断能力が低下していくリスクがあります。その様な状態になってしまうと、不動産(アパート)の管理や預貯金の引き出しなどが出来なくなってしまい、長男の生活を見守ることも出来なくなってしまう可能性があります。

 

◇家族信託の利用

 

 現在は、母と長男が同居していること、母は高齢のため将来施設に入居する可能性があり、その場合には長女がその後の長男の生活管理をしていく必要があることを考慮して、母の財産は長女が受託者として管理して、母が他界したときは、その信託財産を長女が長男のために管理を継続するという内容にします。そして、長男が他界したときには、最終的に長女にその財産が帰属するという内容の家族信託にします。

 母の財産は、自宅・アパート・金融資産があります。母の希望は長男の生活を確保しつつ、最終的には財産は長男と長女に平等にしたいというものなので、今回のケースでは、信託契約を2つ作成します。

 

 1つは、金融資産(母と長男の生活資金として)のみを信託財産とする契約(第一契約)を作成し、2つめは、不動産(自宅とアパート)、金融資産(不動産管理用)を信託財産とする契約(第二契約)を作成します。

 

◇第一契約

委託者       母

受託者       長女

受益者       母

第二受益者     長男

信託財産      金融資産

信託の終了     母及び長男の死亡

信託終了後の財産  長女に帰属させる

 

 母と長男の生活費として金融資産を信託財産として信託しています。母が他界したときは、長女が信託された財産である金融資産を使って長男の生活費などを管理することを目的としています。

 

  

◇第二契約

委託者       母

受託者       長女

受益者       母

第二受益者     長男及び長女

信託財産      自宅・アパート・金銭(不動産管理用)

信託の終了     母及び長男の死亡

信託終了後の財産  長女に帰属させる

 

 自宅とアパートを信託財産としています。第二受益者は長男と長女のため、母他界後は、アパートの収益(賃料)は長男と長女で受けるようにして、長男が他界後は、長女が最終的な帰属権利者となるようにしています。このようにすることで、障害がありアパートの管理は難しい長男にも収益を分配しつつ、最終的な不動産の帰属まで決定することができます。

 

 家族信託を利用することで、母の認知症のリスクなどを恐れることなく将来にわたって大切な財産を有効に活用することが出来ます。もし、家族信託をせずに母が認知症になってしまったら、母の財産は成年後見人と裁判所の管理下に置かれ、思うように財産を活用することが出来なくなるかもしれません。今は大丈夫と思っていても、いつどうなるかわかりませんから、元気なときに家族信託を検討してみて下さい。

 

関連のタグ

TOPに戻る