家族信託について ~その7~(遺言の代用としての家族信託) | 司法書士法人アンドリーガル(上田事務所)

上田事務所のお電話でお問合せはこちら

司法書士法人とまこまい法務事務所(上田事務所)の営業時間

司法書士法人とまこまい法務事務所(上田事務所)のメールでお問合せはこちら


家族信託について ~その7~(遺言の代用としての家族信託)

2022.04.10 Sun

まずおさらいとして、遺言について簡単にご説明致します。

 

 ◇遺言

 遺言は、遺言者が法律に定められた方式で作成します(民法960条)。

 生前贈与とことなり、贈与者(あげる人)・受贈者(もらう人)双方の合意が必要な契約ではなく単独で作成出来ます。そして、その効力は遺言者が死亡したときに初めて効力が発生します。遺言者亡き後の自分の財産の承継先を法定相続人の遺産分割協議によらずに生前に決める事が出来ます。ただ、遺言は遺言者本人が亡くなった後の財産の承継先を決める事が出来る制度です。そのため、二次相続以降の妻や子供らの第三者まで効力を及ぼすことが出来ないのです。

例えば、次の図の様なケースを想定してみてください。

 

 

  

 遺言者である父(本人)が死亡して遺言で自宅を妻に相続させたとします。妻が亡くなった後は、長男に自宅を相続させたいとします。ところが、妻が亡くなった後の相続については、父はいくら自分の遺言に「妻が亡くなったら自宅は長男に相続させる。」と書いたところで効力はありません。

 今回のケースですと、長男と長女の遺産分割がまとまらなければ長男は自宅を相続できない事になってしまいます。よく「うちの家族は皆仲がいいから大丈夫!」と仰る方がいます。実際本当に家族仲がいいのですが、相続の時にもめる原因を作る一つの要因として、相続人ではない者が邪魔をするケースが多々あります。今回のケースでは長女の夫です。長女の夫は相続人ではありませんので、なんの権利も無いのですが、妻(長女)に対して、「自宅を長男だけに相続させてはだめだ。お前にも権利があるのだから半分もらえ!」などと口を挟んできて遺産分割を邪魔してきます。家族同士は仲が良くても、部外者が口を出してまとまらないケースは意外と多いのです。

 

 

  さて、話が本題からそれてしまったので戻します。

 

 遺言を書いたとして、財産の承継先が決まりホッとしたのもつかの間、遺言が効力を生じるのは遺言者が亡くなってからです。もし、亡くなる前に認知症になってしまったらどうなるでしょうか。

 

認知症の母とその娘

 

 例えば、財産の中に株式やアパートなど管理が必要な財産があったとします。株式であれば議決権の行使や適切な時期での売却など、アパートでは管理、修繕、売却などは遺言を作成しても財産の管理までは出来ません。そのため、これらを管理する為に成年後見制度を利用しなくてはならなくなります。成年後見制度の下、後見人が株式やアパートを処分(売却)してしまったら、遺言者が思い描いていた通りの財産の承継は出来なくなってしまいます。

 

 

 この様なケースで家族信託を利用した場合はどうなるかみていきましょう。

 

◇家族信託(遺言代用型)

 

 委託者兼受益者の死亡を信託終了事由として定めて、信託契約で定めた特定の帰属権利者に特定財産を帰属させる方法を遺言代用型といいます。遺言では、財産の承継先は決められますが、管理は出来ません。家族信託では、生前の財産管理が出来て、かつ、財産の承継先を指定出来るのです。

 委託者兼受益者が死亡して、信託が終了したときに信託財産を具体的に誰がどのように取得するのかを決めることができます。

 なお、このケースですと受託者は長男のみなので、例えば財産管理中に、本来であれば長女に残したかったアパートを長男の裁量(信託契約に則って)で処分される可能性もあります。そうすると、本来の希望とおりにはならない事もありうるわけです。

 では、やっぱり遺言でいいのではないか?と思われるかもしれませんが、遺言の場合は先述した通り、認知症になってしまった際の財産管理が出来なくなってしまうおそれと、遺言はいつでも撤回出来るので、自分が相続できると思っていた財産が、いざ相続が開始したらもらえない事に・・・なんて事もあります。なお、受託者を長男と長女の共同にすることも出来ます。そうすれば、先ほどの様な問題は回避する事が出来ます。しかし、受託者を共同にした場合、受託者同士の意見が食い違うと財産の管理が難しくなるなどの心配も出てくる可能性がありますので、共同受託者を設定する場合は、専門家とよく相談の上決めてください。

 家族信託は、前回もお話ししましたが、生前の遺産分割の意味合いもあります。生前に家族みんなでよく話し合って、財産の承継先を決める事が何よりも大切です。また、普段は中々親の財産について話すきっかけがなく話しづらいことでも、話し合うきっかけを与えてくれるのも家族信託のメリットかもしれません。

関連のタグ

TOPに戻る