相続で親の会社の株式はどのように扱われるの?
2022.05.04 Wed
亡くなった父は、会社を経営しており事業は息子の私が引き継ぎました。この場合相続した株式はどのように扱われるのでしょうか?
基本的には有価証券として遺産分割や相続税課税の対象となります。ただ、会社の経営支配権に関わってくる点、高額な評価になる可能性がある点、上場株式とは違い換金性が乏しい点など、通常の有価証券とは異なる配慮が必要になってきます。
◇上場株式とは異なる特殊性
親が経営する株式会社の株式(自社株)も財産的価値のある有価証券であることにかわりはありません。そのため、一般の有価証券と同様に遺産分割や相続税課税の対象となる相続財産です。ただ、遺産分割協議の際には、会社の支配権に直結する問題ですので、今後の会社経営も踏まえた判断が必要となります。
自社株の評価額は、会社の業績や資産状況が好調であればそれに比例して評価額も大きくなってきます。他方で、会社の経営支配権との関係上、第三者に売却することは難しいですし、換金性も乏しいのが実情でしょう。
したがって、自社株の相続においては、事前の対処がとても重要になってきます。納税猶予を利用する、家族信託を利用するなど事前の対策をしっかりしておきましょう。詳細は別の回でご説明致します。
◇自社株の評価
自社株は、上場している場合を除いて「取引相場のない株式」としての評価となります。その評価方法は、相続により株式を取得した者の取得後の議決権割合によって原則的評価方式と特例的評価方式にわかれます。
オーナー社長から自社株を相続して事業を継ぐ場合は、自社株の大半を取得することが多いと思われます。その場合は、原則的評価方式が適用されることが通常となります(財産評価基本通達179)。
◇原則的評価方式の概略
原則的評価方式には、「純資産価額方式」「類似業種比準方式」「純資産価額・類似業種比準併用方式」の3種類の評価方法があります。発行会社が大会社・中会社。小会社のいずれかに該当するかに応じて原則的な評価方法が決定します。
大会社・中会社・小会社の区別は、従業員数あるいは純資産額、直前期末以前1年間の取引金額の規模によって区分されます(財産評価基本通達178)。
①株式評価(主に大会社)~類似業種比準方式~(財産評価基本通達179(1)同180)
類似業種の株価を基に評価する会社の1株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の3つで比準して評価します。なお、大会社は純資産価額方式を採用することも出来ます。
A=評価会社の1株当たりの配当金額÷類似業種の1株当たりの配当金額
B=評価会社の1株当たりの利益金額÷類似業種の1株当たりの年利益金額
C=評価会社の1株当たりの純資産価額÷類似業種の1株当たりの純資産価額
②株式評価(主に中会社)~併用方式~(財産評価基本通達179(2))
純資産価額方式と類似業種比準方式を併用して評価します。なお、中会社は純資産価額方式を採用する事も出来ます。
Lは類似業種比準方式を採用するウエイトであり、小会社については0.5、中会社については、業種と純資産額・従業員数、あるいは直前期末以前1年間の取引金額の規模に応じて、0.6、0.75、0.9のいずれかと規定されています。
③株式評価(主に小会社)~純資産価額方式~(財産評価基本通達179(3)同185)
小会社を含めた全ての会社に適用されうる評価方法です。会社の純資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した純資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価します。
なお、開業3年未満の会社は、必ずこの方式で評価されることになります。
※自社株の具体的な評価については、税務署もしくは顧問の税理士にご確認ください。
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