第4回 境界を越えてきた根は勝手に切り取ってもいい?
2014.01.31 Fri
境界を越えてきた根は勝手に切り取ってもいい?
車庫を隣地との間の空地に建てようと思い基礎工事を開始しました。地面を掘っていくと境界を越えてお隣の太い木の根があることがわかりました。このままでは車庫の基礎工事が出来ないので木の所有者の許可をもらわずに勝手に切ってもいいのでしょうか?
民法第233条2項に「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。」と規定されています。そのため、木の所有者の許可なく切り取ることが出来ます。
民法は、境界を越えてきた根は、境界を越えて伸びてきた枝と違って切り取ることが出来ると規定しています。
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
境界を越えて伸びてきた根を切り取ることが出来るといっても、むやみやたらと切り取ることが権利の濫用に該当して認められない場合もあるのです。
ただ、どのような場合が権利の濫用に該当するかは、社会通念に照らして合理的に判断されます。根が越境してきたことにより発生している被害と、根を切除したことによって生じる木の所有者の不利益の度合いが比較され、重要な判断要素となると考えられています。
ちょっと抽象的でわかりづらいので具体例をあげると、例えば、境界を越えて根が伸びてきていても、何ら障害が発生していない場合に根を切り取ってしまうと権利の濫用にあたる可能性があります。この場合、根を切り取ったことが原因で木が枯れてしまったときは、それが予見できた限り、木の所有者に生じた損害を賠償しなければならない可能性があります。
しかし、冒頭の事例のように、車庫を建てようと思いその必要上、境界を越えて伸びてきている根を切り取ることは原則として権利の濫用には当たりません。ただ、この場合でも根を切り取ることによって木が枯れることが明らかなときは、緊急な必要がないのであれば、木の所有者に対して切り取りを予告する程度の配慮はした方がよいでしょう。