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嫡出子と嫡出でない子には相続分に違いがあるのか?

2022.04.12 Tue

 

いきなりタイトルに専門用語が出てきたので、「???」という方が多いかと思いますので、まず嫡出子と嫡出でない子について次の事例を元に解説していきます。

 事例

 私(A子)は、父親とその愛人との間に生まれた子供です。父親が亡くなり相続の手続きの中で、父親の妻から「あなたは愛人との間の子だから相続分は私の子供の半分だからね」と言われました。

 さて、本当にそうなのでしょうか。

 嫡出子とは、婚姻関係にある者との間の子であり、嫡出でない子は婚姻関係にない者との間の子です。今回の事例のA子さんは、父親と愛人との間の子では婚姻関係にない者との間の子のため嫡出でない子になります。従来は、民法で「嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とする」という規定がありました。しかし、平成25年9月4日の最高裁決定でその規定が違憲とされ、同規定が撤廃されました。そのため、現在は嫡出子とそうでない子で相続分に差はありません。ただし、平成13年6月以前の遺産相続に関してはその最高裁決定の影響は及ばず、平成13年7月から平成25年9月4日までの間に遺産分割協議が成立した場合や遺産分割審判が確定した場合についても、その影響は及ぼさないとされました。

 

次章以降で詳しく解説していきます。

 

◇嫡出子と嫡出でない子の相続分の格差について

 旧民法900条4号但し書前段には、嫡出でない子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とすると規定されていました。

 嫡出子と嫡出子でない子の相続分に差をつける事について、以前からこの規定が憲法違反ではないかという議論がされていました。

 最高裁判所は、平成7年7月5日の大法廷決定において、旧民法900条但し書前段の規定は合憲である(憲法に違反していない)としていました。その理由に「民法は法律婚主義を採用しているから婚姻関係にある子とそうでない子の相続分の区別は立法理由との関連において著しく不合理とは言えない」というものでした。ただ、この規定に対しては別の反対意見もあって「婚姻関係にあるなしに関わらず同じ子であるのに相続分に区別を設けて一方を不利益に扱うことは憲法の法の下の平等に反する」という反対意見もありました。

 

◇平成25年9月4日最高裁決定による違憲判断についてい

 最高裁判所は、平成25年9月4日の「平成13年7月に死亡した被相続人の遺産分割審判の特別抗告事件」の決定で、嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする旧民法900条4号但し書の規定は、遅くとも平成13年当時には、憲法14条1項の「法の下の平等」に違反していると判示しました。

 その理由として、「家族共同体の中でも個人の尊重が明確に認識されるようになってきたこと、父母が婚姻関係になかったという子は、自ら選択の余地がない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されない事、子を個人として尊重しその権利を保障すべきである」との考え方が確立されてきたという事をあげています。 

 

◇平成25年9月4日最高裁決定の及ぶ相続について

 最高裁判所は、嫡出子と嫡出ではない子の相続分を2分の1とする旧民法900条4号但し書規定を違憲と判断しました。その違憲の時期は、平成13年7月からであるとしています。

 そこで、問題となってくるのが、平成13年7月頃からこの判決が下されるまでの間になされた遺産分割協議の取り扱いです。嫡出子と嫡出子でない子が参加した遺産分割協議において、その前提となる相続分に差がないのであれば、遺産分割の結果にも影響してきます。この点について、遡って遺産分割協議の内容に影響するのかどうかをみていきましょう。

 ①平成13年7月より前の遺産相続に関する法律関係には影響を及ぼさない

 こと点について、平成25年9月4日の最高裁判所の決定では「旧民法900条4号但し書の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断するものであるから、それよりも前に相続が開始した事件については、その相続開始時点での嫡出子とそうでない子の相続分の区別には影響を及ぼさない」としました。そのため、平成13年7月よりも前の遺産相続に関する法律関係には影響は及ぼさないことになりました。なぜ、平成13年7月が基準になったのかというと、先にご紹介した平成25年9月4日の最高裁判所の決定の事案が、平成13年7月に死亡した者の遺産分割についての事案だったからです。

 ②平成13年7月から平成25年9月4日までの間の遺産分割協議が成立したもの、遺産分割審判が確定したもの、または、可分債権債務について合意成立や裁判決定があった場合は、それらには影響を及ぼさない

 平成25年9月4日の最高裁決定で、平成13年7月当時から旧民法900条4号但し書が違憲であると判断されたことから、憲法に違反する法律は原則として無効であり、その法律に基づいてされた行為の効力は否定されることになるはずです。

 しかし、旧民法900条4号で規定しているのは、国民生活や身分関係であって、相続という日常的な現象を規律する規定なので、平成13年7月から平成25年の決定まですでに12年もの期間が経過しています。その間に多くの遺産分割や審判がなされてきたものに対し、この違憲の判断が及ぶとすると、すでに行われた遺産分割等の効力にも影響することになり、いわば解決済みの事案も全てやり直さなければならないなど、混乱が生じてしまいます。そこで、法的安定性を重視して、今回の最高裁判所の違憲判断は、平成13年7月から平成25年9月4日までの間になされた遺産分割協議や遺産分割審判の確定、または、可分債権債務についての合意成立や裁判確定があった場合には、それらに対しては影響を及ぼさないとされました。

 ③平成13年7月から平成25年9月4日までの間、遺産分割協議や遺産分割審判などが確定していない場合には、たとえ係争中であっても、嫡出子と嫡出子でない子の相続分は同じとしなければならない

 先の②は、すでに確定しているものを覆すのは法的安定の観点から効力を及ぼさないとしましたが、③については、未だ確定していない事案のため、違憲と判断された旧民法900条4号の規定については、無効であるとの前提のもとに遺産分割協議や審判の確定がなされることが相当と考えられます。そのため、平成13年7月から平成25年9月4日までの間に遺産分割協議が成立していなかったり、裁判の確定がなされていない場合は、平成25年の最高裁決定に従い、嫡出子と嫡出子でない子の相続分を区別することは許されないことになります。

 

◇法律の改正

 平成25年の最高裁決定を受けて、平成25年12月4日に民法が改正されました。旧民法900条4号但し書は撤廃されて、同月11日から施行されています。

 

 

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