相続人の中に認知症や精神障害の人がいる場合はどうするのか?
2022.04.16 Sat
認知症や精神障害によって判断能力を欠く人は、遺産分割協議をする事が出来ません。この様な場合、その人の相続人としての権利を守るために、法的に正式な代理人を定めなくてはなりません。この法的に正式な代理人というのは「成年後見人」のことです。
◇成年後見人の選任について
①後見開始の審判
判断能力が低下した高齢者
後見開始の審判とは、精神上の障害(認知症・脳血管障害・意識障害など)により判断能力を欠く状態にある人を保護する為に、家庭裁判所が成年後見人を選任する手続きです(民法7条)。選任された成年後見人は、本人の財産を管理することになります。その管理の中で、本人に代わって遺産分割協議に参加します。そのため、成年後見人は本人のために遺産分割をする必要があるため、法定相続分をゼロにするなど本人の利益を損なうような内容の遺産分割をすることは出来ません。原則、法定相続分の遺産は確保することになります。
なお、後見が開始されると、本人は自分自身で有効な法律行為が出来なくなります(民法9条)。また、印鑑登録が抹消され本人の印鑑証明書は発行されません。さらに、医師、弁護士、司法書士、会社役員などの地位も失います。
②後見申立ての方法
後見開始の審判の申立ては、本人の住所地の家庭裁判所にします。本人の他、配偶者や四親等内の親族等が申立てをする事が出来ます(民法7条)。
申立てには、本人の戸籍謄本等や財産に関する資料や家庭裁判所が定める様式の診断書などを提出します。提出する書類については、家庭裁判所によって異なる場合もありますので、管轄の家庭裁判所に確認するか、弁護士、司法書士に相談してください。
③成年後見人が選任されるまでのながれ
成年後見開始の審判の申立てを受理した家庭裁判所は、申立人や成年後見人候補者と面談をして、申立てに至った経緯などを聴取したり、医学的な判定を受けるために鑑定手続きを求めるなどして、本人の状態を把握して、成年後見人に適任であるかどうか審理します。
申立て時に、成年後見人の候補者を記載することは出来ますが、必ずしも候補者が成年後見人となることが出来るわけではありません。①本人の心身の状態や生活、財産の状況、②候補者の職業や経歴、③候補者と本人との利害関係の有無、④本人の意向などを確認した上で、その候補者が本人の成年後見人となるにふさわしいかどうかを総合的に判断します(民法843条4項)
そのため、成年後見人になる人は、候補者として挙げた者以外に、例えば、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が選任される場合もあります。なお、成年後見人が相続人の立場となった場合は利益相反となり、成年後見人に特別代理人を選任しなければなりません。例えば、長男が次男の成年後見人となっていた場合で、お父さんが亡くなった時を想定してみてください。長男は、自分の相続人としての地位と次男の相続人としての地位を代理する成年後見人として遺産分割をすれば、自分のいいように遺産分割をすることが出来てしまいます。この様な状況を利益相反といい、先ほど述べたように次男のために成年後見人である長男ではなく、長男に代わって遺産分割に参加する特別代理人を選任する必要があるわけです。
④成年後見人の仕事
成年後見人は、本人の意思を尊重しながら、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、預貯金に関する手続きや介護に関する契約の締結などの法律行為を行い、本人の財産管理をすることになります(民法858条)。
成年後見人の仕事は、本人が亡くなるか、本人の判断能力が回復するまで続きます。そのため、例えば、今回の相続手続きに成年後見人が必要だから申立てをしたけど、遺産分割が整って相続手続きが終わったので、成年後見人の手続きも終了させるということは出来ません。
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